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建築設計事務所を開設して20年になり、その傍らで、建築にまつわる消費者相談のNPO(特定非営利法人)を組織し、各種の相談にも対応してきました。
分譲マンションを除いて、私の依頼者の殆どは建築事業には素人です。設計監理の範囲を超えて、いろいろ助言を差し上げる事の重要性を、身にしみて感じるようになりました。
建築工事には非常に大きな資金を要します。建築主である会社や家族の将来が変わってしまう場合もあります。建設会社の選定に関して後悔しないよう、いくつか注意点を挙げてみましたので参考にして下さい。
倒産しそうな会社
建築工事中に建設会社が倒産したら、通常、工事現場は債権者のものになり、整理が完了するまで工事は凍結し、誰にもどうにもできなくなります。凍結期間は数年に及ぶ事も珍しくはありません。あたりまえの事ではありますが、倒産しそうな建設会社には、工事を依頼しない事が大切です。
しかし倒産の多くは、社員にとっては寝耳に水で、直前までごく普通に現場が動いている場合もあります。良くない噂があったとしても、取引銀行や出入り業者に問い合わせてみたって、決して本当の事は教えてくれません。
なら、建設会社が倒産しても、貴方に損害が及ばないようにしておくしかありません。
それには、工事完成保証が大変有効で、工事完成保証人を立てておく、若しくは金融機関による金銭保証制度を利用するなどの方法を採ります。
完成保証人には、請負会社と同等以上の建設会社を選定し、請負契約書の保証人欄に、きちんと署名押印して貰います。この場合、決して、請負会社の協力(下請)会社を選ばない事。経営状態が苦しくなっている会社の場合、保証人の引き受け手が無く、下請業者に保証させる場合があります。元請が倒産すれば、下請業者が連鎖倒産する可能性が大きく、大変危険です。完成保証の会社は、請負契約より先に決定しておく事、そして保証人の署名押印は、貴方の署名押印(実際の契約締結)より先に済ませておく事を原則とします。
金銭保証を利用する場合、貴方の支払済み工事費を保証する事が主目的ですが、必ず増し嵩を考慮します。請負会社が倒産した現場を、別の建設会社に引き受けてもらうには、もとの請負金額より高い予算を用意しなければならないからです。増し嵩の妥当な金額については、請負契約書の支払条件と工事進捗予想などに基づいて算定します。これには、まず、信頼できる建築士事務所に設計監理を委託した上で、じっくり相談しましょう。
尚、請負契約書に、貴方の支払済み工事費の相当する範囲に付いては、請負の建設会社が倒産したとしても、所有権は貴方にあるよ、という文言を加えておく事も忘れない様にしましょう。
ペーパーマージンだけの会社
建設会社の中には、工事の全て又は殆どを他の建設会社に任せてしまうところが少なからずあります。貴方が納得ずくであれば構わないのですが、例えば契約した建設会社はA社なのに、工事をB社に丸投げし、そのB社は更にC社に丸投げするといった事も実際には起きています。当然、A社・B社それぞれにマージンを取っていますから、貴方が手にする建物は、貴方が支払った工事金額より大幅に安い建物だという事を認識しておかなければなりません。
特に注意しなければならないのは、ペーパーマージンを取るだけのブローカーの存在です。自社には建築技術者が一人も居らず、営業手腕のみで請負契約を取り付ける。それでも、しっかりとした建設会社が実際の工事をしてくれればいいのですが、マージンを取りすぎると、まともな会社は付いて来ません。雑な工事になってしまって、ブローカーに文句を言ったとしても、ブローカーには技術力がありませんから、自社では何も出来ません。こんな場合、他の建設会社を探して、貴方が満足するようにしてくれる事は極めて稀で、結局貴方は泣き寝入りです。
建築工事は建設会社が請負う事が当たり前なのに、契約の相手が建設業者ではない場合もあります。勿論、法律上の問題はあるのですが、そんな事にはお構いなしで、甘い言葉を囁くのです。特に高齢者や女性の建築主は、「騙されるものか」と構えている人ほど、現実に目の前に居る人間には警戒心を解くことが多く、その人間の口から他人の被害話など語られようものなら、「自分はなんてラッキーだろう!」と、結果、騙されてしまうのです。
技術力を持たないブローカーであるかどうかを見抜くには、実績を知る事です。
悪質業者の場合、工事経歴をでっち上げる場合もありますから、そこに挙げられた建物の所有者に、その工事経歴が本当かどうか貴方自身が確認しましょう。
私が知る例の場合、営業マンの乗用車で数軒の建物に案内されたのですが、決して車を降りる事は無く、外観を見るだけに終始したそうです。どれも立派な建物で、中には相当な技術力を彷彿とさせる建物も含まれていたそうで、こんな凄い工事が出来る会社なんだと、信用してしまったようです。案内される建物には表敬訪問するなどして、話を聴いてみましょう。
出来れば現場も見せてもらうようにします。現場に行けば、必ず「建築確認済証」などの各種表示があり、施工者欄にその会社の名前があれば、少なくとも建設業者であることは信じても良いでしょう。
入居保証をちらつかせる会社
賃貸マンションの場合、1年か2年の入居保証をエサに工事の受注を迫る業者が数多くあります。
余程ひどい建物や不便な地域或いは法外に高額な家賃である場合などを除いて、新築というだけで、大概の場合は満室になります。問題は、新築時の入居者が出て行った後、入れ替わりの入居者があるか、ということであって、新築当初の入居者ではありません。ところが、賃貸マンションを初めて持つ建築主に対しては、「この地域は競争率が高い」と脅したり「不動産屋に払う手数料は勿体無い」と甘言を並べ、入居保証が如何に素晴らしい事かまくし立てて工事契約を勝ち取るのです。高齢者や女性に対しては「難しい地域ですが、一旦始めてしまえばなんとかなるものですよ」と、常識的には入居者が集まる見込みが薄いとされる地域に、無理やり建築させてしまう事もあります。
入居保証期間満了と同時に、ほぼ全員が引っ越してしまった、と嘆くおばあちゃんが居ました。この業者は、「入居部隊」ともいうべきスタッフを抱えており、1〜2年毎に、新築建物を渡り歩かせているという噂すら聞きました。
繰返しになりますが、賃貸オフィスであれマンションであれ、妥当な条件設定であれば、入居者に困る事は余りありません。ちゃんとした建物であれば、建設会社の入居保証などあてにする必要はないのです。
筆者は、建築設計事務所を営んで20年になりました。その間設計監理したマンションの殆どが賃貸マンションです。これは、分譲マンションの多くがパンフレットとモデルルームのみで(完成した建物を見ずに)販売されるのに対して、賃貸マンションは、建物が完成してから入居者が決まるので、設計監理者として腕が振るえる場が沢山あるからです。
しかし賃貸オフィスビルやマンションを計画している建築主からのご相談は、私にとって必ずしも「おいしい話」ばかりではありません。バブル期には、銀行に融資を持ちかけられた方々に対して、種々の要素から考えて、リスクが大きすぎると断念してもらった事が何度かあったのです。そんな場合、建物が建たないのですから設計監理するわけには行かず、結局私の仕事にはならないのですが、折角私を信頼してくださった方々には、建物を建てたことによって喜んで頂かなければ何にもならないのだからと自分に言い聞かせ、納得させてきた訳です。
こんな事ばかりしていては設計事務所として遣っていけません。が、
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