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【2月21日夜】
その週の土曜日の晩、紳士は「ご子息の医院にお邪魔して参りました」と言った。長男と話し合い、工事費や融資先について充分説明し、納得させたと言う。「あいつが納得しよったんなら、ワシはえぇ。これで行きまひょ」「この調子で、娘のほうもアンジョウしたっとくなはれや」
翌週は結構忙しかった。
紳士が金融公庫に連れて行ってくれた。長男も一緒だった。公庫の後、長男は保証機関の手続もした。随分多くの書類を取り寄せた。実印も何度か押した。
「工事は、いつ頃からかかりまんねん?」と確認すると、「以前から申し上げておりますように、工事に掛かるのは来年です。まだまだ時間がありますよ」 随分先の話だ。今まだ2月だから、これから一年以上、何をするんだろう? 「それは社長、これだけの大工事ですから、手続がいっぱいあるんです。申請も大変なんですよ。」そんなものかと思った。
紳士は、相変わらず毎日来て、他社でマンションを建てたオーナーの悲劇を色々紹介してくれた。その中にはA社の話も出てきた。老人は少し疲れてきた。「なんやかんや言うても、ワシが生きとる間になんとかしといたらんといかん。息子も娘も世間の事を知らへん。ワシの事をあてにしとるんや」
(続く)
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