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【2月17日夜】
火曜日、娘は幼い頃の友人を連れてきた。銀行系の大手不動産会社の部長である。彼には、会社の清算の際随分世話になったことを老人は覚えていた。彼の話を聴かないわけには行かなかった。
不動産会社の部長は、自分の後輩でB社に勤務した経験があるという、二級建築士の若者を同行していた。「B社にはひと月くらいしか居なかったんですけど・・・」と自信無さそうに自己紹介した。「二級建築士のあんたなんかに、何がわかんねん」と老人は懐疑的ではあった。しかしB社の図面を見ながら、二級建築士が「これで5億て言うたんですかぁ! 普通やったら、3億とちゃうかなぁ」のつぶやきに驚いた。「なんやてぇ!」と聞き返したが、同じ事を言う。部長も「そらお父さん、そんなもんですよ。」と言う。
「ほんまやろか?!」老人は、わが耳を疑った。娘は「お父ちゃん、いわんこっちゃない!」と、怒るというより悲しそうな表情を見せた。
再び、二級建築士が口を開いた。「この家賃保証ですけどぉ、30年って言うてるでしょ。実際は10年なんですけどぉ・・・」口の中でモソモソしゃべったが、声が小さく、老人には聞き取れなかった。
老人は無口になった。疲れきった顔をしていたのだろう、部長と二級建築士は、それからすぐに引き上げた。娘も、翌日仕事があるからと早々に引き上げた。
(続く)
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