実録『或る老人の場合』
    :はじまり編
  (社)大阪建築士事務所協会
機関紙 「まちなみ」より
有限会社フォルム・ディ
代表取締役 河添 佳洋子

これは、ひとりの資産家老人が見舞われた建築騒動の物語で、私が接した事実に、多少脚色を加えたフィクションです。
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1【プロローグ
2【1月7日夜
3【1月9日夜
4【1月16日昼下がり
5【1月19日夜
6【2月10日昼下がり
7【2月15日昼下がり
8【2月17日夜
9【2月18日
10【2月21日夜
11【2月28日
12【2月29日
13【3月1日
14【3月4日夜
15【3月6日
16【3月4日
17【ちょっとだけ後日談
18【おしまいに

【2月18日】
翌朝、9時になるのを待ってB社に電話した。「あんたとこ、5億やというとったが、ほんまはもっと安ぅ出来るんとちゃうんか!」と噛み付いた。昼前に、紳士が飛んできた。「社長、どこか他社が余計な事を言うて来たんですか。私どもの会社を信用してくださいよ。社長もご存知の通り、当社は株式も上場しておりますし、傘下には多くの会社を抱えております。そんな当社が、社長を騙すような事をするわけが無いじゃないですか。工事費は充分お安くさせていただいております。勿論もっと小さな工務店なら安く出来るところもあるでしょう。しかし、当社は確実な工事をさせていただくわけですから、内容から言えば、充分にお安い工事費ですよ」と、なんとなく納得させられてしまった。

それから、紳士は毎日老人宅を訪れた。家政婦は、相変わらずぶっきらぼうにする。笑顔ひとつ見せない。それにもめげず、紳士は通ってくれた。

(続く)


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