信書:憤懣と自戒を込めて

拝啓 学校法人の理事様
  (社)日本建築士事務所協会連合会
機関紙 Argus-eyeより
有限会社フォルム・ディ
代表取締役 河添 佳洋子

 貴方は『設計コンペ』と銘打っておられたのですよ。
最初にお話を聞きに伺ったとき、計画与条件を書いた書類を戴きました。プレゼン期日まで半月程度しか無かったので、その場で質問を受けてくださいましたね。それで、所要空間と各室面積をよく拝見したら、話の合わない部分に気付きました。中間階の室面積が他の階に比べて非常に少ないのです。この疑問に対して貴方は、「談話コーナーとかで調整して戴いたらいいんじゃないでしょうか」と仰いました。「ん?」って思いましたが、その場はそれで納得してしまいました。
私に声を掛けていただいたのは、参加メンバーの中で最も遅かった。それは承知していました。だからこそ、期日に間に合わせようと、他の仕事を横に置いといて、スタッフに徹夜までさせて仕上げたのです。模型も間に合わせましたでしょ。
プレゼンを持参したとき、貴方は随分気に入ってくださったと思いました。「内緒ですが」と断った上で「現時点で最も有力と思われる作品です」と、パースを見せてくださった。これがまぁ実にくさいパースでした。「最近の学生は贅沢ですからね、いい建物じゃないと来てくれないんですよ」とも仰った。「最も有力な作品がこの臭さで、これをいい建物だと思っているのかしら?」とは思いましたが。私どもの計画コンセプトに「成る程、設計事務所さんというのは、そこまで考えておられるんですね」とも仰った。「設計コンペだという事だけれど、他の参加メンバーは設計事務所ではないのかしら?」とも思いましたが、「まさか!」と、・・・打ち消したのでありました。
その後の展開を見てわかったのですが、私に声を掛けてくださったときには、既に某設計事務所が実施設計に着手していたのでしょ? だって入札参加ゼネコンに設計図書が配布されたのは、プレゼンからひと月後ですよ。

 作品が集まってから一週間後の理事会で、設計者を選定するとのご予定でしたから、これじゃ、設計者が確定されてから3週間で図書配布した事になるのです。参加ゼネコンの中の一社に「一般図だけで見積するの?」と聞きましたら、「構造図も設備図も揃っています。見積期間が1週間しかないのにA1で200枚位あって大変なんです」というじゃないですか! どれほど手馴れた事務所でも、どれほど人数が揃った組織事務所でも、それだけの実施設計を3週間で纏めるのは不可能ですよ!
一体どういう目的であのような事をされたのか、今もってわかりません。ゲスの勘繰りで申し上げれば・・・。当初お話をうかがったとき、プレゼンと同時に設計監理報酬の見積書を提出するよう仰いました。プレゼン内容と報酬見積額のどちらで判断されるのか伺いましたら、「法外に高額であれば判りませんが、常識的な金額であれば、単に参考にさせていただくだけです」と仰った。
実のところは、既に実施設計に着手していた某設計事務所と、報酬面で折り合っていなかったんじゃないですか? だから、数社から報酬見積を集めて、ついでに計画案も提出させて、「他の事務所だったら設計監理料はこの程度じゃないか」とか「この報酬で、ここまでやってくれる事務所がある」とかなんとか、要するに交渉のネタにしようと企んだのではないですか?

 今になって気付いたのですが、そもそもコンペと銘打っているにしては、与条件に齟齬が多いし、計画期間も短い。審査・選定基準も明らかではないし、・・・。
反省しましたよ。信頼できる友人の紹介で貴方にお眼にかかった訳ですけれど、知り合いの紹介というだけで信用してはいけないんですね。悲しい事ですけれど。
私的なコンペに対して、手を打てないのかしら?・・・とも・・・思いました。


Copyright(C)2000,2005 Form-D Allrights reserved