【拝啓 適法住宅を販売する建売業者様】
分譲マンションの販売価格が随分安くなった昨今、戸建住宅の堅調ぶり、大変慶賀に存じます。とりわけ『売建(ウリタテ)』と称される注文住宅(のようなもの)では、従来の建売に比べて御社の金利負担も小さく、とりわけ買主が決まってから土地を仕入れるという離れ業は、お見事でございます。
更に、欠陥住宅がどんどん建てられるこの業界にあって、必ず検査済証を取得するという現在の理念は、大変ご立派でございます。ここで敢えて『現在の理念』と申し上げるのは、過去に御社が販売された建売住宅には、違法建物や欠陥住宅が存在する事を私は知っているからです。しかしまぁ、心を改められたのですから、善しと致しましょう。
欠陥住宅を販売しておられた頃、その建物の設計監理報酬(現実には監理は行なわれていなかったと思いますが)として30〜35万支払っておられました。その地域では名の知れた設計事務所に依頼しておられ、「この先生は役所に顔が利くので高いんですよ」って嘆いておられましたっけ。
しかし、突然訪問してきた建築屋の営業マンに何の不信感も抱かずに工事を発注し、それが酷い欠陥住宅であった事に、御社は心底懲りられたのでした。クレームが来たときに連絡しても、電話に出ない・携帯にも繋がらないということを経て、兎に角購入者から訴えられたりしたら大変だと別の業者に対応させて、内容証明を送ろうとしたときに初めて、その建築屋さんが許可を得た建設業者ではないことに気づき、大慌てなさっていましたね。何故、そんな業者に発注したのですかと私が聞いたら、「名刺の電話番号が『0120』だったから」とお答えになり、あの時私はひっくり返りそうになりました。『0120』であるというだけで信頼してしまうなんて、ホント建売屋さんの風上にも置けないというか、可愛すぎるというか、アホというか・・・。
まぁ、それはそれとして、懲りて、痛い目にあって学習して、検査済証を取得しようと思い立ち、その為には建築士の監理が必要だという事に気づいたまでは、随分偉かった。誉めて差し上げます。
んで、ずっと頼んでおられた設計事務所に「監理もお願いします」って頼んで、その先生はソコソコ有名人だから、建売住宅の現場に来てくれる筈も無く、若いスタッフに任せっきりで、そのスタッフはチョンボ続きで。
『いい加減な監理』に対して御社が支払っていた報酬額に、5万円程上乗せして「河添先生、完璧な設計監理をお願いします」っつうのは、ちょいと虫が良すぎるんじゃぁありませんか!
しかも、ラベル(失礼!レベル)の低い業者を使うから、言わないとしない、言ってもしない。建築基準法を見た事あるの?って疑問に思わざるを得ない若者が監督ですってイキ巻いて。監理が何かも知らない。そんな現場で、監理ができよう筈がありません。ましてや40万とか50万で、計画して、設計して、確認降ろして、材料選定にも付き合って、監理して、検査に合格させて・・・。これは無茶苦茶です!
建物に物質的なプレミアを付けようと思ったら、無垢のフローリングを使ったり、珪藻土を壁に塗ったり、それなりに高額な材料を使うくせに、確かな建物にする為の建築士報酬をケチるのは・・・何故?
工事費を値切るのはいいけれど、だからといって、軸組検査の手直しを4回検査してもまだ直らないような業者は・・・駄目ですよ。監理さえ頼んでおけば、ハチャメチャな業者に工事させても大丈夫だと思ってるんですか。アホ業者を教育出来るほどの報酬を支払っているおつもりですか。
挙句に、その業者が御社に泣きついたら「先生、検査機関の中間検査に合格してるんだから、もぅいいんじゃないんですか」は無いでしょ。御社のためにやってるんですよ。検査機関がちゃんと見てると思っておられるなら、御社の事ですからお金出して監理を頼まないでしょ。しっかりして下さい。
欠陥住宅を売ってらした頃のように、確認申請の名義だけなら、私に頼む必要ないのよ。工務店の建築士で充分じゃないですか。
なに?! 工務店に建築士が居ない! ・・・そんな・・・。
反省しましたよ。若いスタッフの勉強になればいいか、なぁんて格好いい事考えて受注していましたけれど、結局私が出て行かないと貴方は納得なさらないのだし、だからといってそれだけの報酬は出しては下さらない。結局、私が私自身を大安売りしていたに過ぎないのです。
【拝啓 この地域で適法な建売住宅を売っている業者など聞いた事が無い
と嘯く建売業者様】
貴方、多分70歳代でいらっしゃいますよね。とても純朴な風貌をなさって、まるで農家の親父さんのように『絶対悪い事しない』と感じさせますよ。
でもねぇ、ホントいい加減にしないといけません。
この前私が見せていただいた住宅は、建物が建築確認と違う事は勿論だけど、敷地まで違うじゃないですか。建築確認では20坪ほどあるのに、実際の敷地は12坪程しか無いですよ。それに、買主が持っている土地の図面は、この土地のものではありませんよね。間口も奥行も違うんだもん。
それにねぇ、建蔽率違反するにしても、道路にはみ出してはいけませんよ。1階は、さすがに(道路を掘削すると目立つからでしょうけれど)敷地内に留まっては居ますが、2階3階は大丈夫だろうってはみ出させていますよね。1階よりも大きな2階3階が乗っかっているわけで、道路上にはみ出た2階の床が大きく撓んでしまっています。あの撓みは、遠くから見ても判りますよ。はみ出た部分の外壁下端が、弓の様に垂れています。ゴルフボールが転がるなんてもんじゃなく、人間が転がりそうじゃないですか。
この住宅を買った人が、貴方に文句を言ったら、「柱建てましょか」って仰ったそうですけれど、何処に建てるんですか? 垂れている部分の直下は、道路ですよ。仮に貴方のご提案のように、敷地内から斜めに柱を立てたとしても、通行人や車両に対して大いに危険です。
買主からクレームがあったときに、この住宅の設計者を連れてこられたそうですが、その先生が、「こんなもんでっせ」と言ったとか。よく出来た話ですね。事業主が事業主なら、建築士も建築士です。「ここいらでは、こんなんが普通でっせ」とか。果てには、「こんだけ安ぅにしてるのに、こんな事言われたらどもならんなぁ」「ここの市で、合法建築物なんか売ってる業者なんかおりまへんでぇ。役所に聞いてみなはれ」・・・よくもまぁそこまで嘯けますね。
ついでですが、この買主が、とある建築相談を通じて一級建築士に現場を見てもらったそうです。その建築士はこの市内に事務所を構えておられるそうですが、なんと、その建築士も言ったそうです。「こんなもんでっせ」